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高岡市(富山県)

工芸の街で出逢う、
伝統と、新しい風と。

2017/04/07

まだ真新しい北陸新幹線のシートに身体を預けて、2時間と40分少々。降り立ったのは富山県・新高岡駅のホーム。ほどなくして、終点の金沢駅へと向かう列車を送り出す、発車のベルが鳴り出しました。耳慣れた電子音ではない、ハンドチャイムのような、いや、それよりもっとふくよかな金属の音。心地いい余韻をたっぷりと残すそれは新鮮で、それでいてどこか懐かしい不思議な耳触り。金属の鋳造で名を馳せた「工芸の街」高岡らしい演出に、旅のはじまりからうれしい気持ちになりました。

千本格子と石畳の街を歩くと。
高岡の街のはじまりは、この地が要害としての軍事機能だけでなく、水陸交通の要として経済機能も持つことを見抜いた前田利長が高岡城を築いた約400年前。築城まもなく、城下の繁栄を図るために7人の鋳物師を招き、拝領地を与えたことから工芸の街としての歩みをはじめます。その際利長が与えたのは、現在も千本格子や石畳が美しく、新旧の鋳物を取り扱う店が多く残る金屋町。カメラ片手にぶらりと歩くだけでも、気ままにギャラリーを覗いても楽しい街。煙突から昇る煙を見つけたら、今もこの地で工房を構える鋳物師が金属を溶かしている合図です。
能作がつくる、新しい伝統。
そんな伝統と歴史を受け継ぐ一方、クラフトコンペを開催するなど、新しい風も積極的に取り込む高岡市。その技術力を活かして革新を起こすひとたちがいます。その代表格が、鋳物メーカーでありながら直販も行う「能作」。硬いという金属に対する固定概念を覆す、錫100%でできた「曲がる」シリーズはご存知の方も多いのではないでしょうか。ここで企画開発課に籍を置き、鋳型製作に励む梅田泰輔さんも、能作の革新性を支えるひとり。「金属を流し込む型となる鋳型は、これまで土や鉱物が主な原料でしたが、新たにシリコーン製の鋳型を開発。これまでよりも早く、たくさんの種類の製品を作れるようになりました」と胸を張ります。「能作のモットーは絶対に『できない』と言わないこと。とにかく新しいことが好きで、技術に自信がある。それに課題があるということは、次に進むチャンスでもあります。そうやってどんどん挑戦してきた成果が近年、注目していただけている理由だと思いますね」
おりんの音色に耳を澄ませば。
長く仏具を手がけてきた「山口九乗」もまた、高岡工芸の可能性を広げようとしているメーカー。仏壇の前で手をあわせるときにチーンと鳴らす「おりん」を今、楽器として発信しています。波の音、小川のせせらぎ、小鳥のさえずりなど、心地いいとされる音に共通しているのが「f分の1のゆらぎ」。それ 、ここ山口久乗のおりんの音にもあるという。「職人たちのこだわりのおかげで、おりんひとつずつに音階をつけることに成功しました」と語るのは社長の山口敏雄さん。「不思議なのはどの音を鳴らしても不協和音にならないこと。音同士が結びついて、やがてひとつの空気のうねりになるんです」。聴いてみると、なるほど納得。叩いた瞬間に鳴る高音は確かにドレミのそれだけど、後につづくウワンウワンウワン……という残響は確かにひとつの音の塊に。でも、あれ? この音どこかで……。

「実は新高岡駅の発車の合図は、この久乗おりんが使われているんですよ」と笑顔の山口さん。どおりで懐かしいと思ったら、小さな頃から仏壇の前で聴いていたあの音だったとは。工芸の街、高岡市で触れた伝統と新しい風。帰りの新幹線に乗り込んで耳を澄ますと、おりんのやさしい音色に導かれて至福のまどろみへと引き込まれるよう。動き出した車窓を横目に、旅の余韻が心地よく広がっていました。

福井県の木工メーカー Hacoa(ハコア)とのコラボレーションアイテムです。
※能作直営店・公式通販サイト、Hacoa直営店・ネットショップのみの取扱いとなります。

文:白井千遥 写真:三浦千佳

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