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燕市・三条市(新潟県)

燕と三条のモノづくり、
百聞よりもやってみるのが吉。

2017/08/17

モノづくりのまち・燕市や三条市を旅するなら、スケジュールにぜひ「体験」のふた文字を。産地のイベント「燕三条工場の祭典」で積極的に工場内を開放しているほか、開催期間外でもさまざまなモノづくりの体験で、訪れる私たちを楽しませてくれています。果たして鉄を打つときってどんな音がするのか、磨きたての金属ってどんな色つやなのか。ふだんは覗けない職人たちの世界に触れる旅に出かけました。

世界品質の金属が生まれるまち。
江戸時代、河川の氾濫によって苦しむ農民に和釘づくりが奨励されたことが、今なおつづく燕市、三条市のモノづくりのまちとしてのルーツ。以降、鍛冶技術とともに削る、磨くなどの、金属加工の技術も高め、名実ともに日本一の金属産地になりました。現在では刃物、工業製品を多く手掛けるほか、スプーンやナイフ、フォークといったカトラリー(金属洋食器)は国内生産の9割以上が、このエリアでつくられるもの。また、ノーベル賞の晩餐会で使用されたオリジナルカトラリーも「メイド・イン・ツバメ」というから驚きです。
そんなこのエリアは唯一無二の技への自信の表れか、工場内を一般向けに開放する「オープンファクトリー」に積極的。最高の製品が生まれる現場を気軽に見学できるばかりか、職人たちと同じ道具、材料を使ってモノづくりを体験、さらに自分がつくったものを持ち帰って、普段に使えるとあれば、早くも最高の旅になる予感がたっぷりです。
モノづくりの原点、和釘を打つ。
モノづくりの原点、和釘づくりを体験できるのが、三条市にある『三条鍛冶道場』です。受付を済ませて工房へ足を踏み入れると第一線を退いた大ベテランたちがお出迎え。威圧感……ではなく、やさしい雰囲気たっぷりなのでご安心を。さて促されるままに前掛けと軍手を装着して火床の前に立つと、すでに火が熾き、燃料であるコークスが赤々と揺れています。この日、先生として教えてくださったのは大河ドラマのセット製作のために和釘の注文が入るほどの名人。「まずはお手本」と鉄の角材を火の中に入れ、十分に熱せられたら鎚でリズミカルに打つ。それを繰り返してあっという間に二本の和釘が完成です。鮮やか!
「頭がL字型の階打釘は打ち込んだ後に出た頭が意匠になる。頭が丸い方は最後にぺしゃんこになって素材とひとつになる。床なんかに使うのはこっちね」と、名人の厚い手のひらの上で二本の釘が揺れます。それでは見様見真似で体験。名人が要所要所でフォローしてくれるものの、あんなに簡単そうに伸ばしていた先端がなかなか尖らない!「はい、打って!」カンカカンッカンカン!「回して!」カンカンッカカン!やはり、名人とは体に染みついているリズムが違う。それに同じ場所に鎚を振り下ろすことのなんと難しいこと。完成した品を比べると、名人のものより叩いた回数が多い分だけ縦に長く、間延びした印象。そのあと、五寸釘からペーパーナイフをつくる作業も体験しましたが、こちらもお手本よりもなんだかのっぺり。機能に優れたものは、見た目にも美しい。そんなことをまざまざと感じさせられる出来栄えです。とは言え、自分で打ったものだから、不格好でも愛着はひとしお。ペーパーナイフに「越後三条 鍛冶道場」と銘切りを入れたもらったときは、免許皆伝を与えられたようで感動してしまいました。
すべての金属は、磨かれる。
三条エリアが和釘からのこぎり、刀、包丁、鋏など、刃物という分野で技術を縦に積み上げてきたとするなら、燕エリアは煙管、金属洋食器、ハウスウェアなど、その技術を横に広げながら発展してきました。その中でも「磨き」の品質は世界トップクラス。初代iPodのまるで鏡みたいな背面の仕上げは、ここ燕の職人たちの手作業で生まれていたことはあまりにも有名です。
そんな磨きの技術を体験できるのが、燕の伝統的な研磨技術を伝承していこうと、職人の育成に取り組んでいる『燕市磨き屋一番館』。磨くのはステンレスのビアカップ、教えてくださったのはこの道ひと筋31年の大ベテラン・高橋千春さんです。簡単な説明を受けると、早速挑戦。高橋さんが機械のスイッチを入れると、セットされた羽布(バフ)が唸りを上げて回転をはじめます。その勢いに圧倒されそうになりながらも、カップをゆっくり押し当てます。気を緩めるとカップごと飛んでいきそうになるから、全身の筋肉がたちまちガチガチに……。「膝で支えれば安定するよ」「手だけじゃなく、体全体も動かして」とアドバイスをいただきながら、中磨きと仕上げ磨きの二回を完了。最初はマットだった質感が鏡のように艶やかに変身しました。
「大変でしょう(笑)」と笑う高橋さん。「磨きの工程は商品の仕上がりを大きく左右する。いろんな職人がリレーのようにつないできたものを、磨きひとつでダメにすることだってあるから責任は重大です」と語る姿に、誇りが滲んでいるようでした。

火、鉄、鎚、羽布……、同じ道具を使っても、それを扱う者の力量によって仕上がりは雲泥の差となるのがモノづくりの深いところ。河川の氾濫に苦しむ農民たちからはじまった鍛冶仕事が世界を驚かすまでになったのは、職人一人ひとりの妥協を許さぬ姿勢の積み重ねなのだと感じ入りました。
そして、旅の醍醐味が非日常の体験であるならば、燕三条のモノづくり旅はまさにぴったり。燕市産業史料館では家族連れやカップルたちが、三条鍛冶道場では若い女性たちが、目を輝かせながらその技術に触れていたのが印象的。また、普段は遠い存在の職人たちと一対一で話ができるのも、個人的にはうれしかったな。夢いっぱいのテーマパークもいいけれど、学べて、触れ合えて、そして自分がつくったものをその手応えと一緒に持ち帰られるモノづくりの体験旅。燕市と三条市に来たなら、おすすめです、絶対。

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