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燕市・三条市(新潟県)

燕と三条、
おいしいものづくり。

2017/08/24

とかく工場、モノづくりの視点で語られることの多い燕三条地域ではあるけれど、新潟県の他の地域と同じように、ここにも豊かな食文化と歴史がたっぷり。今年の夏は、ガストロノミーでたどる燕市と三条市の旅に出かけてみませんか?

わきめもふらず、やるだけなんです。
燕市と三条市を訪れたのは7月のこと。米どころ新潟らしく、車を走らせると美しい水田が無数に広がっています。どこもきちんと手入れが行き届き、雑草の姿もほとんど見えない中、随分と様子が異なる水田が一箇所。太陽の光をたっぷりと浴びて稲が力強く背を伸ばすのは同じだけれど、その周りに雑草たちが元気よく顔を出しています。
「ああ、やばい。また雑草抜きだあ」と笑うのは、この水田を営む樋浦幸彦さん。なんだか嬉しそうですね、と問いかけると「まあ、好きでやってるからね」となんとも言えないいい笑顔が返ってきました。他の水田と違ってここまで雑草が育つ理由。それは樋浦さんが完全無農薬、自然肥料100%という栽培にこだわっているからに他なりません。除草のための化学薬品も散布しないから、まるで雑草たちの天国のよう。だけどこれが本来自然のあるべき姿なのかも。「この方法は僕の代からはじめたんですけど、はじめは手探りでね。肥料も売っていないから親父と手づくりしてました。草だらけの水田をじいちゃんに見られたときは、すごい形相でやめちまえって怒られたなあ」。苦労話も全部、樋浦さんにかかれば笑い話に変わります。
お米と並行して育てるきゅうりハウスを覗かせてもらうと、大きな葉をたっぷりと茂らせて、きゅうりの青臭い、でも清々しいいい匂い。「今年は天候不順がつづいたから、農家の腕の見せ所っす」。そう言って脇芽をかいていく。一見すると葉の数が減って成長が妨げられそうだけれど、こうすることで養分が必要な場所に行き届き、真っ直ぐ大きな実へとつながっていきます。
「僕もきゅうりみたいに、これからもわきめもふらず農家をやっていくだけっす」。樋浦さんが育てたきゅうりは旅する新虎マーケットでいただくことができます。また秋に開催されるイベント「燕三条 工場の祭典」では新米を食べるイベントも。手塩にかけたその味を、ぜひ味わってみてほしいと思います。
おしゃべりの花も咲かせたい、伝統の朝市。
2、7、12、17、22、27日……。2と7のつく日にこのエリアを旅するなら、早起きをして朝市に出かけてみませんか? 北三条駅降りてすぐのガード下沿いで開催されているのは600年以上もつづく朝市。朝の6時頃から続々とオープンする露店に並ぶのは、採れたての野菜、果物、山菜、その他いろいろ。露店のおじさん、おばさんたちに挨拶をしながら、「わあ、このなす大きいね! おばちゃんがつくったの?!」と会話を弾ませるのは、案内係を買って出ていただいた山倉あゆみさん。「晴れの日も雨の日も、夏も冬もつづいてきた朝市。5日に一度は必ず新鮮な食材が手に入るので、冷蔵庫いらずで暮らせるんですよ」と教えてくれました。これからの時期のおすすめはなんですか?「葡萄でしょうね。東京じゃ1万円くらいするものが、1,000円くらいで手に入るんですから!」
おお塩っぱい、止まらない。
農家さん、朝市と巡って、最後にやってきたのは、1771年創業の酒蔵をルーツに持つ越後味噌醸造さん。こちらの蔵では100年以上も前につくられた木桶で今も変わらず味噌を仕込んでいます。「一番大きいものだと5トンほどの味噌を仕込めます。生産性を考えたら軽いプラスチック製の桶などが良いのかもしれませんが、我々の味を守れるのは長年使いつづけた木桶だけ。木桶自体に菌が棲みついていて、それらが独特の風味を醸してくれるんです」と語るのは、30代にして代表を務める木龍康一さんです。「もうこれほどの木桶をつくれるのは全国でも一社しかありません。丁寧に使っていかなければいけませんね」と愛おしそうに木肌に触れました。
販売スペースではお味噌汁の試飲など、越後味噌醸造こだわりの味を試すことができます。中でも特筆すべきが「味噌漬け」。ほんのひとかけらを口の中に放り込んだだけで、おお塩っぱい! あまりの衝撃に目を白黒させていると、ここまでの道中を案内してくださった燕市職員の楡井さんが笑いました。「塩っぱいでしょう。めちゃくちゃ塩っぱいんですよ。だけど、この味、小さい頃には必ず家の食卓にあったなあ。これが燕の味なんでしょうね」
この味噌漬け、確かにカルチャーショックなくらいに塩っぱいのですが、お茶などでさっと口の中を洗い流すと、また次のひと口を求めたくなるから不思議。なすや牛蒡、きゅうりと並んで、紫蘇の実も美味しいのですが、この紫蘇の実は近所のおばちゃんたちが持ち込んだものが使われています(お店の外には紫蘇の実買います」の看板も!)。皆さんも、燕伝統の塩っぱい味噌漬け、ぜひお試しあれ。

モノづくりのまちの新たな一面を知れた今回の旅。紹介したほかにも、地元のひとが「油を補給する」と言って食べに行く背脂ラーメンや、あまりの居心地の良さについつい長居してしまうカフェ「ツバメコーヒー」など、巡るべきところはたくさん。そのどれもが地元愛に溢れていて、きっとお腹だけでなく、心まで温かくなります。食べる燕と三条、これにて終了。旅すればあなたもきっと、病みつきになること間違いなしです。

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