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日置市(鹿児島県)

だれやめと、温泉と。
「お湯」で養う薩摩の英気。

2017/10/21

楽しい旅には、心地よい疲れもつきもの。そんなときは、香り豊かな焼酎でひとときのだれやめを。「だれやめ」とは、鹿児島の方言で、焼酎を飲みながら一日の「だれ(疲れ)」を「やめる(止める)」晩酌のこと。飲み方は、ロックか、それとも水割り? いえいえ、芋焼酎はお湯割りで、香りを楽しみながらいただくのが鹿児島流ですよ。
さらに気分をリフレッシュしたいなら、日置市での湯めぐりもおすすめです。霧島や指宿という有名な温泉地の多い鹿児島県にあって、実は日置市も良質な源泉に恵まれた魅力的な温泉地。日置の地で江戸時代から繁栄する二つの温泉は、きっとあなたの旅の疲れを癒してくれるはず。
さて今日はひとつ、だれやめに欠かせない美味しい焼酎づくりの現場と、日置が誇る二つの温泉郷をめぐる旅へ出かけましょう。

実直な焼酎づくりが、すべての土台
清澄な湧水に恵まれた日置の大地に蒸留蔵を置く小正醸造は、創業130年以上の歴史を持つ焼酎づくりの老舗。230品種を超える商品を取り揃え、ネーミングやパッケージデザインなど、その仕事のひとつひとつにこだわりをみることができます。とはいえそれは、素材を生かし、味と品質にこだわり抜いた実直な焼酎づくりが土台にあってこそ。素材となるさつまいもは、旬を逃さずに収穫し、一つ一つ人の手で選別。状態のいい部分だけを次の工程へと送り出します。旬をとらえる秘訣は、契約農家さんとの密なコミュニケーション。地道なやりとりが最高の素材を手に入れる鍵です。芋蒸ししたものを米麹と合わせた二次もろみは、県内で唯一の横型蒸留器で蒸留。沸騰しやすく、もろみの特徴が出やすい横型蒸留器は、味や香り、それに原料の品種ごとに縦型と使い分けるそう。だからこそ230種類もの製品をつくることができるんですね。

現代の技術や感覚を生かして多種多様な品種を取り揃える一方、昔ながらの製法へのこだわりも。敷地内に平成11年につくられた「師魂蔵(しこんぐら)」は、昔から伝わる技の伝承を目的とした手造り専門の酒蔵。かめ壺仕込み、木樽蒸留、かめ壺貯蔵によってつくられる本格芋焼酎「蔵の師魂」は、コク深さの中に樫がほんのり香る小正自慢の一品です。

だれやめには、お気に入りの一本を。
見学を終えて隣接した直売所に戻れば、蔵に漂う芳醇な香りに高揚した気持ちを察するかのように、私たちを出迎えてくれる焼酎の数々。そして、試飲をおすすめしてくれるスタッフのみなさん。
豊富なラインナップが揃う小正醸造の芋焼酎。一日の疲れを癒す大事なお酒だもの、しっかり味見してから選ばないと。
すっきりとした柔らかさが飲みやすい「赤猿」、強烈な芋の香りとネーミングがクセになる「小鶴 初心者お断り」、そして独特の香りとコク、まろやかさが深いこだわりを感じさせる「蔵の師魂」・・・。あぁ、芋焼酎がこんなにも個性豊かなものだったなんて知らなかった。
だれやめで飲みたい一本は、蔵で働く職人の技とこだわりに思いをはせながら選んでみましょう。きっと焼酎への愛着も、ひとしおですよ。
地元に根付く温泉文化の心地よさ
次に向かったのは、日置市を代表する温泉郷のひとつ、湯之元。1640年ごろに開湯されたと言われるこの温泉地は、神経痛や皮膚病などに効能のある良好な泉質で知られ、観光客や湯治客が今でも訪れています。どこか懐かしさを感じる古い町並みと合わせて印象的だったのは、早くから温泉に入りにくる地元のみなさんの姿。私たちが入浴させていただいた「元湯・打込湯」にも、地元の常連さんが次々と訪れます。浴場の中で交わされる常連さん同士の方言の難解さには思わず笑ってしまうけど、それはそれで湯之元という地域と混ざり合えている気がして、なんだか心地がいい。帰り際、「またいらしてくださいね」と見送ってくれたお母さんの素敵な笑顔に「またきます!」と声に出す自分がいたのでした。
西郷どんの愛した湯で、ほっと一息
湯之元温泉をあとにして向かったのは、日置を代表するふたつ目の温泉郷、吹上温泉。日置市南部に位置する吹上エリアもまた、良質な硫黄泉に恵まれた温泉地のひとつであり、西郷隆盛や小松帯刀も湯治に訪れたという歴史ある場所です。夕方に温泉へ着くと、中には数人の常連さんが。
「昔はこの温泉があるからといって家に風呂を作らない人も多くいたんですよ。だから今でもこうやって、地域の人が毎日入りにくるんです。」そう説明をしてくれたのは、レトロな雰囲気がその歴史を感じさせる中島温泉旅館のご主人、中島さん。500年近く前から温泉として利用されてきた中島湯は、地元住民にとっては「あるのが当たり前」な公共物に近いのかもしれません。家にお風呂のない地元住民のために、月々定額で入り放題という決まりもあるそう。まさに地域密着型の温泉です。

昭和11年に建て直しをしたという旅館の佇まいは、そこだけ時間が止まったかのように昔の姿を残した老舗温泉旅館そのもの。その場にいるだけで非日常な感覚を楽しむことができます。宿泊は一日に3組限定で受け入れており、宿泊者は特別に「西郷どんの湯」に入ることができるそう。日帰りもいいけど、宿泊も捨て難いですね。
さて、薩摩の英気を養う「お湯」をめぐる旅もそろそろ終わりです。
吹上温泉の上質なお湯で一汗流したら、いよいよお待ちかねのだれやめの時間。お気に入りの焼酎の準備はいいですか?飲み方はもちろん、お湯割りですよ。お湯を先に注いで、焼酎はあとから。芋焼酎の柔らかな風味を楽しみながら、さぁ乾杯。鼻へと抜ける芋の香り、体をめぐる心地よい熱。これで明日も、頑張れそう。

そうそう、温泉と焼酎を楽しんだら、帰りのお土産も忘れずに。
日置のお土産におすすめしたいのは、「湯之元せんべい」と「ラムドラ」。せんべいの上に乗った山椒が印象的な「湯之元せんべい」は、まもなく創業100年を迎える菓子の老舗「梅月堂」の看板商品。創業当初からの店の顔であるばかりか、今や鹿児島土産の定番としても広く知られています。シンプルかつ上質な素材にこだわった素朴な甘さに山椒の爽やかさが加わり、新しい味わいを楽しむことができます。

同じく梅月堂が2年ほど前に販売を始めた「ラムドラ」も、ぜひ大切な誰かに渡してほしい商品のひとつ。創業者の石原與助が斬新なアイディアで「湯之元せんべい」を作り上げたように、現代に生きる自分たちも何かチャレンジしなければという思いを持っていた4代目の石原さん。奥さんと様々な試行錯誤を繰り返したのちに生まれたのが、餡バターにラムレーズンを贅沢にちりばめてサンドした「ラムドラ」でした。芳醇な香りのラムレーズンとまろやかな甘さの餡バターが織りなす香りと甘さの調和は、これまでに味わったことのない贅沢なひとときを与えてくれるはず。食べればきっと、あなたも驚きますよ。
お土産をしっかり買い込んだら、薩摩の英気の源をめぐる旅も本当におしまい。日置に暮らす人々の真面目さと優しさ、そして暮らしの一端にふれることのできた旅でした。
だれやめと、温泉と。疲れたらまた、日置に戻ってきます。

文:高橋要 写真:市岡祐次郎

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