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松山市(愛媛県)

歴史と文学とおもてなしの街には、
市民の人情が息づいていました。

2018/01/08

穏やかな瀬戸内海に面した愛媛県松山市。その中心には、現存天守十二城のひとつである松山城がたたずんでいます。温暖少雨な瀬戸内式気候のおかげか、そこで暮らす人々も穏やかな人が多いようです。また四国遍路で根付いたお接待の心が、「おもてなし」となり旅人をあたたかく迎え入れる土地でもあるのです。そして何より、正岡子規を始めとする多くの文学者を輩出し、夏目漱石の小説の舞台となったことは多くの人の知るところ。そんな文学が香る城下町をそぞろ歩き。

松山市の偉大なる先人、秋山兄弟って?
正岡子規と夏目漱石は第一高等中学校時代に知り合い、親友となりました。2人は互いの才能を認め合い、漱石が愛媛県尋常中学校の英語教師として赴任した際には同居生活もおこなったほどです。そんな子規と同じ時代を生きた松山出身の偉人・秋山兄弟の生涯を描いたのが、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」。3人の主人公を通して、近代国家への道を歩む日本の姿を描いた名作として、今なお多くの人に愛読されています。

ところで皆さんは秋山兄弟をご存知ですか?兄の好古、弟の眞之はともに軍人として日露戦争で活躍しました。陸軍に所属した好古は、その功績から、「日本騎兵の父」と称されており、晩年は故郷に帰り、旧制中学校の校長となり、後進の育英にあたりました。一方の眞之は海軍の軍人。バルチック艦隊を打ち破った作戦が高く評価されました。

市街地にある「秋山兄弟生誕地」には、秋山兄弟が生まれ、幼少期を過ごした生家が復元されています。「生前の写真や、資料などが残っており、間取りも可能な限り再現されています。秋山兄弟を身近に感じることのできるところなんですよ」。そう話してくれたのは、常務理事を務める山崎さん。ボランティアガイドが、秘められた秋山兄弟のエピソードなども語ってくれるため、彼らの人となりをより詳しく知ることができます。「好古は口よりも行動で示すような人物でした。『誠実』という言葉がそのまま似合う人だと感じています。弟の眞之もそんな兄を慕い、敬服していたそうです」。
敷地には騎馬に乗った好古と、ぐっと前を見据える眞之の銅像があります。2人の目線の先にはお互いがおり、兄弟の絆を感じることができました。

小説「坂の上の雲」から見た松山市
もっと子規や秋山兄弟について知りたい…。そう考えながら向かったのは、松山城の裾野にある「坂の上の雲ミュージアム」。「近代国家の形成期に生きた人々が、現代の私たちの生き方にヒントを与えてくれるのではないか」と、松山市が掲げる「坂の上の雲のまちづくり」を象徴する建造物でもあります。設計は安藤忠雄氏で、コンセプトは、「屋根のない博物館」。まち全体を一つの博物館と見立てて設計したのだとか。「このミュージアムの延長線上には萬翠荘や松山城があり、周囲の景観に溶け込むような造りになっています。館内も屋根を取払い、回遊できる空間になっているのが特長です」と、学芸員の石丸さん。館内には「坂の上の雲」が連載された新聞記事で覆われた壁、日露戦争時代の日本、松山でのロシア兵捕虜の展示など、当時に想いを馳せる資料が数多く展示されていました。企画展も随時行われますが、ちょうどお邪魔した時の企画展示は、主人公たちにまつわるものでした。

丁寧に展示物の紹介をしていただく中で印象に残ったのが、作者の司馬遼太郎氏と『坂の上の雲』の登場人物の子孫たちとの交流に関する展示。『坂の上の雲』をきっかけとして、司馬氏や正岡家を継いだ正岡忠三郎氏らが監修者となり『子規全集』全25巻が生まれたことなど、司馬氏と松山の深い関わりを知ることができました。

俳人、子規に思いを馳せて…
偉大な先人の生き方に触れて、ちょっと自分を見直したくなりました。さあ、インプットの次は、アウトプットです。松山市は、暮らしの中に俳句が根ざしていることをご存知ですか? 子規に関する豊富な資料が展示された「松山市立子規記念博物館」では、自分で俳句を作って入力し、短冊にプリントアウトして持ち帰ることができる体験型コーナーがあります。詠んだ句をオリジナルの短冊にして、旅のお供にしてみましょう。

松山市立子規博物館の展示を見た後、「松山はいく」のガイドさんと待ち合わせ。
ガイドの渡辺さんの「思ったこと、感じたことを文字に起こして、気持ちを季語に乗せましょう!」の言葉通り、俳句はとっても身近に楽しむことのできる文学です。道後には温泉だけではなく寺社がたくさんあり、歴史ある酒蔵やちょっとレトロな路地裏など、創作欲をくすぐるスポットがいっぱい。そこで感じた素直な気持ちを十七音にしたためました。
そして出来上がったのはこちら。我ながら震えるほど良い句が詠めました…。

松山はとてもコンパクトな街で、漱石が「マッチ箱のような」と表現した市内電車や自転車で、くるりと周ることができます。でもそのコンパクトな中に、温泉や文学、歴史など様々なお楽しみと学びが詰まっています。ぜひ、お湯に浸かるようにゆっくりと、松山の街に浸ってください。

文:菅野彩 写真:市岡祐次郎

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